カルシウムの豊富な食品


塚原典子
日本女子大学家政学部食物学科

江澤郁子
日本女子大学家政学部食物学科




目次に戻る

はじめに
1.乳類;MILKS(牛乳・乳製品)
1)牛乳・乳製品
2)スキムミルク
2.魚介類:FISHES & SHELLFISHES
3.豆類:PULSES
4.野菜類:VEGETABLES
5.藻類:ALGAEおよびきのこ類;FUNGI
1)藻類
2)きのこ類
6.種実類:NUTS & SEED
、、および香辛料類;SPICES
1)種実類
2)香辛料類
7.その他
おわりに
参考文献


はじめに

 21世紀を目前に控え、超高齢化社会への対策が積極的に進められているところであるが、個々人のQOLの維持・向上をはかり、健康を確保するための健康づくりが大きな課題である。そのためにはWellnessの3要素といわれる運動・栄養・休養のバランスのとれた生活スタイルが望まれる。特に、栄養の観点からみれば、日常の食生活が問題となる。

 栄養素のなかでもカルシウムは、骨の主要成分であり骨の健康を維持・増進させるうえでも重要かつ不可欠なものであり、それが骨代謝に与える影響は大きい。

 ところで、実際のカルシウム摂取量は(*1)は、未だ所要量には達しておらず、さらに年次推移をみても、この20年間ほとんど増加せず、横ばい状態である。また、カルシウム摂取量の充足分布においても、およ64%の人が充足されていない状況である。

 現在の豊かな時代に、カルシウム不足といわれながらも、この状態にあることは、カルシウムは、よほど心がけない限り、いかに摂りにくい栄養素であるかを示している。

 近年の豊かな食環境は、複雑な食形態を招き、偏食や欠食などアンバランスな食生活を引き起こしかねない。このような現状のなかで、日本の食生活、食習慣からみて摂取しにくいカルシウムを、日常の食生活のなかでいかに十分量補給していくか大きな課題であり、カルシウムを多く含む食品を、もっと積極的に摂るよう工夫する必要があると思われる。

 ここでは、四訂日本標準成分表および五訂日本標準成分表 - 新規食品編 - をもとに、最近よく食卓にのぼる西洋野菜や中国野菜などの食材についても若干追加して述べる。

1.乳類;MILKS(牛乳・乳製品)(表1)

【表1】乳類;MILKS(牛乳・乳製品)
食 品 名100g中
含有量
1回使用量備   考
目安量Ca量
普通牛乳 100;mg200ml200;mg
加工乳 100200ml200
加工乳濃厚 110200ml220乳脂肪4.0%
加工乳低脂肪 130200ml260乳脂肪1.5%
生乳ジャージー種*130200ml260未殺菌のもの
●●ホルスタイン種*100200ml200未殺菌のもの
コーヒー乳飲料 **60
フルーツ乳飲料 40
無糖練乳27017g(大1) 46エバミルク
加糖練乳30021g(大1) 63コンデンスミルク
乳酸菌飲料乳製品43 ヤクルトなど
乳酸菌飲料殺菌乳製品 55カルピスなど
脱脂粉乳国産1,10020g(大3強) 220
脱脂粉乳輸入1,300 主として学校給食用
調整粉乳380 育児用栄養強化品
チェダーチーズ74020g(1切) 148
ゴーダチーズ68020g(1切) 136
エメンタールチーズ1,20020g(1切) 240
エダムチーズ66020g(1切) 132
カッテージチーズ 5520g11
カマンベールチーズ46020g(1切) 92
クリームチーズ 7020g14
パルメザンチーズ1,300 5g(大1)65
ブルーチーズ 59020g118
プロセスチーズ63020g(1切) 126
チーズスプレッド 46015g69
チーズホエーパウダー* 620
ヨーグルト脱脂加糖 120普通ヨーグルト
ヨーグルト含脂加糖 130果汁・果肉添加を含む
ヨーグルト全脂無糖 110無糖ヨーグルト
ヨーグルトドリンクタイプ *110
生クリーム(高脂肪) 6010g6
コーヒーホワイトナー
液状:乳脂肪*30
液状:植物性脂肪 *21
粉末状:〃 〃 11010g11
*:五訂日本食品標準成文表 - 新規食品編 - 1997年(科学技術庁資源調査会編)
上記印以外は四訂日本食品標準成文表1982年(科学技術庁資源調査会編)
**:乳飲料には健康志向タイプのものもあり、牛乳の栄養価を生かしながら、蛋白質、カルシウム、鉄、ビタミン(C、Eなど)、ビフィズス菌増殖に有利なオリゴ糖などを添加したもの、あるいはニンジン、カボチャなどの野菜果汁を加えたものなどがある。

1).牛乳・乳製品

 牛乳・乳製品はカルシウム供給源として最も代表的な食品である。牛乳は、その含有量のみならず吸収率においても優れた代表的な食品である。牛乳中には乳糖やカゼインなどのカルシウム吸収を促進する成分が含まれており、これらがカルシウム吸収に対して効果的に働いていると考えられる。

 ここで、日本人の乳・乳製品の平均摂取量をみると、平成9年国民栄養調査において、1日1人当たり134.8gにすぎない。
また、図1の牛乳飲用量の推移(消費動向調査1994)に示すように学校給食が提供されている学童期までの牛乳摂取量は300ml程度であるのに対し、その後減少しはじめ、20歳以降では150ml程度となり、先に述べた日本人の乳・乳製品の平均摂取量とほぼ同程度の摂取量に低下している。

【図1】牛乳飲用量の推移(1994年消費動向調査)

これらのことから、牛乳・乳製品の摂取が日本人の食習慣においてかなり難しい課題であることは明らかである。

 牛乳200gには約200mgのカルシウムが含まれているが、実際に私たちの日常生活のなかで牛乳を飲まずに所要量(成人で600mg/日)のカルシウムを充たすのは、かなり困難である。ましてや、高齢者においては、長い間の食習慣、牛乳嫌い、あるいは乳糖不耐症などの問題があり、牛乳および乳製品の摂取は難しい。そこで、日常の食生活のなかに、これらをうまく取り入れていく工夫が必要である。

2)スキムミルク

 乳製品のなかで幅広い利用法があるのがスキムミルクである。

 脱脂されており、牛乳より脂肪分は少なく、20gで牛乳1本分のカルシウム(約220mg)が摂取でき、工夫しだいで、西洋料理にはもちろんのこと、表2(*2)にあげたような日本料理にも大いに利用することが可能である。

 多少のミルクっぽさも、香り豊かな食品にまぜればわからなくなり、また牛乳と違い、好みの濃度に溶いて飲める、粉末のまま料理に使える、などの利点もある。

【表2】スキムミルク入り日本料理
料理名材 料Ca mg
のし鳥鳥挽肉 20
ポテト6
砂 糖2
醤 油2
スキムミルク6 72
茶巾ポテトポテト 20
砂 糖0.6
スキムミルク6 72
竜川豆腐寒 天 1
豆 乳4011
スキムミルク10 120
ごま豆腐 10
ご ま15180
スキムミルク15 180
うどん小麦粉 30
0.3
スキムミルク15 180
落 雁麦こがし 3
砂 糖6
スキムミルク3 36

2.魚介類:FISHES & SHELLFISHES(表3)

【表3】魚介類 : FISHES & SHELLFISHES
食 品 名100g中
含有量
1回使用量備   考
目安量Ca量
まあじ65;mg 70g(中1尾)46;mg
開き干し(生) 8080g64
焼き 90
むろあじ くさや890 15g(1/10枚)134
あゆ(養殖) 25080g(1尾)200
いかなご(こうなぎ) 30020g(10尾)60
佃煮 55015g83
まいわし 7060g(中1尾)42
生干し 8030g(1尾)24
丸干し 1,40030g420
目刺し 22020g44
煮干し 2,2003g66
しらす干し 5305g(大1)27
みりん干し 59010g(1枚)59
かたくちいわし 6050g(1尾)30
田作り 1,5003g(10尾)45
みりん干し 80025g(1枚)200
うなぎ蒲焼き 150100g(1串)150
きびなご 10080g(8尾)80
干しきびなご 1,5005g75
このしろ 19080g152こはだ
さんま 75100g75
みりん干し 12035g(1枚)42
すけとうだらスキミダラ *130
ししゃも国産生干し 19020g(2尾)38
輸入生干し 44020g(2尾)88
わかさぎ 75055g(中2尾)375
あさり 8050g(ムキ身)40
佃煮 26020g52
あげまき* 65
しじみ 32050g(殻付き)160
はまぐり 14020g(ムキ身)28
芝海老 12050g(中5尾)60
桜エビ素干し 2,0006g(大2)120
干し海老皮つき 2,3006g138
ブラックタイガー* 65養殖
かにゆで(ずわい)120
※水産缶詰
いわし缶詰(水煮) 270
(味付け) 330
(トマト漬け) 280
(油漬け) 400
かつお缶詰フレーク味付け 140
さけ水煮缶詰 150
さば缶詰(味噌煮) 190
(トマト漬け) 160
さんま缶詰(味付け) 290
(トマト漬け) 320
(蒲焼き) 250
たらばがに缶詰(水煮) 150
からふとます(水煮) 110輸入品
エスカルゴ(水煮) 400
*:五訂日本食品標準成文表 - 新規食品編 - 1997年(科学技術庁資源調査会編)
上記印以外は四訂日本食品標準成文表1982年(科学技術庁資源調査会編)

 特に骨ごと食べられる小魚などは、日本古来からの重要なカルシウム供給源である。いわしの丸干しや目刺し、小魚の佃煮、新鮮ないわしを骨ごとすり身にしたつみれなど、骨ごと食べられる魚を工夫しながら、毎日の食生活のなかに取り入れることが望まれる。骨をやわらかくする調理法(骨ごとすり身にする、圧力釜・鍋の利用)で、歯の欠損や義歯のため咀嚼力が低下している高齢者でも食べられる料理を工夫することも大切である。また、煮干し、桜エビ、ごまなどを軽く炒ってからすり『ふりかけ』にするなど、調理法だけでなく、その摂り方を工夫することも重要である。

 さらにビタミンD不足による腸管でのカルシウム吸収能の低下を考慮すれば、食品からのビタミンD供給源として魚類の摂取は、大いに期待される。