10.食品の加工・調理によるCa、Mgの損耗

 例えば、米や小麦など穀類は原穀の状態ではMg含量は多いが、精白米や小麦粉に精製、加工されるにつれて減少する。また、栄養素は調理の過程で損耗することが知られているが、栄養素の種類、食品中における存在化学型によりその損耗率が異なる。Ca、Mgいずれも水溶性栄養素で調理・加工の過程での損耗はまむがれられないが、なかでもMgの損耗は水溶性ビタミンなどと同様大きいので、これを考慮せねばならない。野菜のなかでも葉野菜は特に調理損耗が大きい。表2にその例を示す。

【表2】種々の献立中ミネラル含有量への調理損耗
( 木村美恵子 : J Nutr Sci Vitaminol 36,S,1990より)
MenuNa
(mg)

(mg)

(mg)
ca
(mg)
Mg
(mg)
Fe
(mg)
Zn
(mg)
Mn
(μg)
Cu
(μg)
平均
(C/C)
大量調理(小学校)
肉じゃが
損耗(C/C)
460
27
500
2
79
10
2.3
34
16
20
.7
19
.8
50
83
64
120
29

29
ほうれん草と
もやしの煮物

損耗(C/C)
360
22
140
55
43
28
33
8
24
47
.66
6
1.2
8
320
14
100
52

27
魚肉団子と
こんにゃくの煮物

損耗(C/C)
980
2
230
15
75
23
15
6
15
0
.62
6
.6
40
240
25
46
4

13
酢漬けキュウリ
損耗(C/C)
500
35
340
39
6.5
35
10
23
17
60
.23
67
.41
21
40
69
71
18

41
カレー
損耗(C/C)
980
11
800
11
150
6
43
36
23
4
.79
10
2.0
9
400
5
140
18

12
さばフライ
損耗(C/C)
310
45
160
16
100
17
31
11
11
8
.28
36
.31
21
83
20
48
9

21
中華サラダ
損耗(C/C)
590
2
150
27
24
31
13
43
8.4
14
.35
20
.40
0
150
17
48
41

22
目玉焼
損耗(C/C)
360
0
320
11
140
7
13
28
14
22
.53
40
.53
51
180
49
58
52

29
平均損耗(C/C)1822 202422252533 2824
大量調理(大学食堂)
さばの煮物
損耗(C/C)
580
8
380
30
190
10
3
79
17
19
.59
18
.6
40
36
40
72
26

32
ハンバーグ1
損耗(C/C)
1,400
12
220
50
220
4
26
7
25
31
1.5
17
2.2
61
350
27
62
69

31
ハンバーグ2
損耗(C/C)
230
42
190
24
82
12
2.4
4
9.6
4
2.0
-80
1.8
5
104
4
72
6
2
ひじきの煮物
損耗(C/C)
800
33
190
79
27
67
65
57
34
56
1.8
-50
.3
85
403
54
25
74
54
みそ汁
損耗(C/C)
520
26
86
46
29
49
14
69
8.7
42
.85
-165
.29
41
130
40
110
8
17
いわしのマリネ
損耗(C/C)
440
33
170
32
100
17
14
7
16
6
.47
69
.91
-75
90
1
74
38
14
平均損耗(C/C)2643 263726-32262837 25
家庭料理
さばの煮物
損耗(C/C)
599
30
298
20
94
38
1.5
21
28
59
.58
2
.46
39
-
-
49
12

28
ハンバーグ1
損耗(C/C)
218
54
87
67
43
66
2.1
47
6.9
59
.54
46
.76
71
-
-
32
41

56
カレー
損耗(C/C)
1,030
14
348
8
134
6
42
19
9.8
1
.93
22
1.5
17
-
109
5

8
ひじきの煮物
損耗(C/C)
1,037
19
469
3
57
0
60
9
39
33
.39
52
.14
61
-
-
43
4

23
サラダ
損耗(C/C)
215
30
271
13
16
16
215
30
7.3
12
.29
17
.25
0
79
25
33
49
21
平均損耗(C/C)295 25253328382522 24

11.Ca、Mg栄養を考えるとき、添加・強化食品・そのバランスに注意を!!

 最近、Caの摂取不足が啓蒙され、多くの食品にCaが添加・強化され市販されている。これらを安易に食すると単なるCa不足分の補給だけでなく、過剰量のCaのみを摂取することになり、ミネラルのアンバランス、特に摂取量が低下してきているMgとの摂取バランスを崩す恐れがある。このような人工的にかたよった食品を無造作に摂取するなど食品の選択を誤ると、近年30歳代の若年層にも広がってきている脂質の代謝異常、心疾患→突然死のパターンをたどることとなる。
また、骨粗鬆症など骨強化の目的で摂取したCa補強剤などが不適当であると、骨の脆弱化につながり、鉄、亜鉛など 微量元素の代謝バランスをも崩し、大きな健康障害を招く可能性もあることに留意することが必要である。これらを防ぐには、安易な一般論の言葉にまどわされることなく、まず、自己の栄養摂取状況を知り、そりにフィットした食生活改善を、しかも、自然の食品の組み合せにより行わなければならない。栄養・食品といえども人工的なバランスをもつものを摂取する場合は専門家の指導が必要であろう。