奈良県生駒市が”消費者保護条例”を施行


2008年4月1日から、”生駒市消費者保護条例”が施行されました。(奈良県下では始めての消費者保護条例制定都市)

この条例は、悪質な販売行為について明記し、それら行為を行うことを禁止しています。

また、それらの行為をおこなった事業者に対して勧告し、勧告に従わない事業者に対しては、その事業者名を公表することとしています。

■・悪質な訪問販売お断りステッカー

■・ 「不当な取引行為」の要約

■・生駒市消費者保護条例

■・奈良弁護士会・制定にあたっての意見書

■・市長日記: 消費者保護条例(案)について答申を受けました!


悪質な訪問販売お断りステッカー

■・”悪質な訪問販売お断りステッカーを作成しました。”

これは、悪質な訪問販売に対して、訪問を拒絶する意思表示をするもので、玄関などの外から見えやすい場所に貼っていただくようになっています。

また、悪質な訪問販売にあったときの連絡先ステッカーも付いており、これは電話機からすぐ見えるところに張っていただくものとしています。

なお、ステッカーは6月に市内各戸に配布する予定をしています。

(注)ステッカーはあくまで意思表示するもので、法律的に訪問販売を禁止するものではありません。

消費生活センター:生駒市公式ホームページ)より


■・「不当な取引行為」の要約

「不当な取引行為」として行ってはならないとされる行為の要約は以下の通り13項目です

(1)消費者を欺き、又は消費者に迷惑を及ぼして接触し勧誘する行為
(2)消費者が契約に関する事項を正確に認識することを妨げる行為
(3)消費者の自由な意思形成を妨げる行為
(4)虚偽内容の契約書を作成し又は契約を締結させる行為
(5)消費者の状況に不適合な内容の契約を締結させる行為
(6)消費者に不当に不利益な内容の条項を含む契約を締結させる行為
(7)過剰な信用供与等を伴った契約を締結させるなどの行為
(8)不当な信用供与契約等を行う行為
(9)不当に債務の履行を強要する行為
(10)事業者の債務不履行等の行為
(11)解除権の行使等に関し、消費者の権利を害する行為
(12)解除権の行使等に関し、事業者の義務を履行しない行為
(13)その他消費者の利益を害するおそれがある行為

この条例は 悪質な販売行為について明記し、それら行為を行うことを禁止、それらの行為をおこなった事業者に対して勧告し、勧告に従わない事業者に対してはその事業者名を公表することとしています


■・生駒市消費者保護条例

(目的)

第1条 この条例は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力、経済力等の格差 にかんがみ、消費者の利益の擁護及び増進に関し、消費者の権利の確立及びその自立の支援 その他の基本理念を定め、市及び事業者の責務等を明らかにするとともに、消費者を保護し、及 びそのくらしを守るための施策の基本的な事項を定めることにより、消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策の推進を図り、もって市民の消費生活の安定及び向上を確保することを目的とする。

(基本理念)

第2条 消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策(以下「消費者施策」という。)の推進は、次に掲げる消費者の権利の確立及びその自立の支援を図ることを基本として行われなければならない。
(1) 商品及びサービス並びにこれらの提供を受ける権利(以下「商品等」という。)によって生命、身体及び財産に危害を受けない権利
(2)商品等について自主的かつ合理的な選択の機会が確保される権利
(3)商品等について不当な取引条件及び取引方法を強制されない権利
(4)消費生活において消費者の個人情報が侵害されない権利
(5)消費生活において必要な情報が提供される権利
(6)消費生活において必要な知識及び判断力を習得し、主体的に行動するための教育を受ける権利
(7)消費生活に関する意見を表明し、その意見が消費者施策に反映される権利
(8)商品等によって不当に受けた被害から適切かつ迅速に救済される権利
(9)消費者被害を受けないために自ら行動することにつき、行政から支援を受ける権利
2消費者施策の推進は、高度情報通信社会の進展に的確に対応することに配慮して行われなければならない。
3消費者施策の推進は、環境への負荷の低減その他の環境の保全に配慮して行われなければならない。

(市の責務)

第3条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、消費者施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2市は、消費者施策の策定及び実施に当たっては、消費者及び消費者団体の意見を反映するよう努めるものとする。
3市は、消費者施策の策定に当たっては、国及び奈良県(以下「県」という。)と役割を分担し、国及び県が策定する施策との整合を図るとともに、その実施に当たっては、国及び県並びに独立行政法人国民生活センター(以下「国民生活センター」という。)、警察その他の関係機関、自治会その他の関係団体及び関係者との連携に努めるものとする。
4市は、消費者団体が行う消費生活の安定及び向上に資する健全かつ自主的な活動を支援するため、必要な措置を講ずるものとする。
5市は、消費者が消費者被害を受けないために、及び消費者被害を回復するために自ら行動することができるよう適切な支援を行うものとする。

(事業者の責務)

第4条 事業者は、基本理念にかんがみ、商品等を供給するに当たっては、次に掲げる責務を有する。
(1)消費者に対する危害の防止
(2)消費者に対する迷惑の防止
(3)商品等の品質等に関する広告その他の表示、消費者に対する勧誘等を適正に行うことにより、消費者に対する必要な情報の明確かつ平易な提供
(4)公正な取引の確保並びにその取引の目的及び内容に応じた消費者の年齢、知識、経験、判断力及び財産の状況等に対する配慮
(5)消費者の個人情報の適正な取扱い
(6)消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するための必要な体制の整備等及び当該苦情の適切な処理
(7)市が実施する消費者施策への協力
2事業者は、その供給する商品等について、環境への負荷の低減その他の環境の保全に配慮するとともに、品質その他の内容の向上に努めなければならない。

(消費者の役割)

第5条 消費者は、自ら進んで消費生活に関して必要な知識を修得し、及び必要な情報を収集するなど自主的かつ合理的に行動するとともに、消費者相互の連携を図ることにより、消費生活の安定及び向上に積極的に寄与するように努めるものとする。
2消費者は、消費者被害等に関して市長又は関係機関等に相談等をし、必要な情報の提供に努めるものとする。
3消費者は、消費生活に関し、環境への負荷の低減その他の環境の保全及び知的財産権等の適正な保護に配慮するよう努めるものとする。

(消費者団体の役割)

第6条 消費者団体は、消費生活に関する情報の収集及び提供並びに意見の表明、消費者に対する啓発及び教育、安全かつ公正な取引を確保するための市場の監視、消費者の被害の防止及び救済のための活動その他の消費者の消費生活の安定及び向上を図るための健全かつ自主的な活動に努めるものとする。

(危害の防止措置)

第7条 市長は、商品等によって生ずる危害を防止するため、生命、身体又は財産に危害を及ぼすおそれがある商品等に関する情報の収集及び提供その他必要な措置を講ずるものとする。

(啓発活動及び教育の推進)

第8条 市は、消費者の自主的かつ合理的な行動を促進するため、消費生活に関する知識の普及及び情報の提供等啓発活動を推進するとともに、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じた消費生活に関する教育の充実等に努めるものとする。

(消費者団体への支援)

第9条 市長は、消費者団体が行う消費者の消費生活の安定及び向上を図るための健全かつ自主的な活動を促進するため、活動及び交流の場の提供、活動内容に関する情報の発信その他の必要な支援を行うものとする。

(高度情報通信社会の進展への的確な対応)

第10条 市は、消費者の年齢その他の特性に配慮しつつ、消費者に対する啓発活動及び教育の推進並びに苦情の処理に当たっては、高度情報通信社会の進展に的確に対応するために必要な措置を講ずるものとする。

(不当な取引行為の禁止)

第11条 事業者は、消費者との間で行う商品等の取引に関し、次の各号のいずれかに該当する行為として規則で定めるもの又は契約に反する行為(以下これらを「不当な取引行為」という。)を行ってはならない。
(1)消費者を欺き、又は消費者に迷惑を及ぼして接触し、勧誘する行為
(2)消費者が契約に関する事項を正確に認識することを妨げる行為
(3)消費者の自由な意思形成を妨げる行為
(4)虚偽内容の契約書を作成し、又は契約を締結させる行為
(5)消費者の状況に不適合な内容の契約を締結させる行為
(6)消費者に不当に不利益な内容の条項を含む契約を締結させる行為
(7)過剰な信用供与等を伴った契約を締結させるなどの行為
(8)不当な信用供与契約等を行う行為
(9)不当に債務の履行を強要する行為
(10)事業者の債務不履行等の行為
(11)解除権の行使等に関し、消費者の権利を妨害する行為
(12)解除権の行使等に関し、事業者の義務を履行しない行為
(13)前各号に掲げるもののほか、消費者の利益を害するおそれがある行為

(調査)

第12条 市長は、不当な取引行為が行われている疑いがあると認めるときは、その行為の方法及び内容その他の事項について調査することができる。

(事業者に対する資料提出の要求)

第13条 市長は、次条の規定による指導若しくは勧告又は第16条第1項若しくは第2項の規定による情報の提供に当たって、不当な取引行為の有無を判断するため必要があると認めるときは、事業者に対し、期間を定めて、判断に必要な資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を合理的な理由なく提出しないときは、市長は、不当な取引行為があったものとみなすことができる。

(指導及び勧告)

第14条 市長は、事業者が不当な取引行為を行っていると認めるときは、当該事業者に対し、当該不当な取引行為を是正するための必要な措置を講ずるよう指導し、又は勧告することができる。

(勧告に従わない事業者の公表)

第15条 市長は、前条の規定による勧告をした場合において、事業者が正当な理由なくその勧告に従わないときは、当該事業者の氏名又は名称、当該勧告の内容その他必要な事項を公表することができる。
2市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、当該公表に係る事業者にその旨を通知し、意見を述べる機会を与えるとともに、生駒市消費生活審議会の意見を聴かなければならない。

(不当な取引行為に係る情報の提供)

第16条 市長は、不当な取引行為による被害の発生及び拡大を防止するため必要があると認めるときは、速やかに、当該不当な取引行為の方法及び内容その他の必要な情報を市民に提供するものとする。
2市長は、次の各号のいずれかに該当するときは、当該不当な取引行為の方法及び内容、事業者の氏名又は名称及び住所、行為者の氏名及び住所その他の必要な情報を市民に提供することができる。
(1)不当な取引行為に関する苦情の処理の申出(他の市町村等への申出を含む。)が相当数あり、今後も当該事業者による被害の発生があると推測できるとき。
(2)前号に掲げるもののほか、不当な取引行為により消費者に重大な被害が生じ、又は生ずるおそれがあると認めるとき。
3前条第2項の規定は、前項の規定により情報を提供する場合について準用する。

(国の機関等に対する情報の提供)

第17条 市長は、次に掲げる者からの照会(第3号に掲げる者からの照会にあっては、弁護士法(昭和24年法律第205号)第23条の2に規定する手続によるものに限る。)があったときは、相談等により収集した消費生活に関する情報(消費者(相談等を行った者を含む。)が識別され、又は識別され得るものを除く。)を提供することができる。この場合において、当該情報の真実性の審査を経たものかどうかを明らかにした上で提供しなければならない。
(1)国又は他の地方公共団体の機関
(2)国民生活センター
(3)弁護士会
(4)消費者契約法(平成12年法律第61号)第2条第4項に規定する適格消費者団体

(苦情の処理の申出)

第18条 消費者は、市長に対し、商品等の取引に関する苦情の処理を申し出ることができる。

(苦情の処理)

第19条 市長は、前条の規定による苦情の処理の申出があったときは、助言、あっせん、事業者の氏名の公表その他この条例に定める処理を行うことにより、当該苦情を適切かつ迅速に処理するものとする。
2市長は、前項に規定する苦情の処理を行うに当たっては、国及び県、国民生活センターその他の関係機関等と連携を図るものとする。

(市長に対する申出等)

第20条 市民は、この条例の定めに違反する事業活動が行われ、かつ、この条例に定める措置が講じられていないと認めるときは、市長に対しその旨を申し出て適切な措置を講ずべきことを求めることができる。
2市長は、前項の規定による申出があったときは、その調査を行い、必要があると認めるときは、この条例による措置その他適切な措置を講ずるものとする。

(消費生活審議会)

第21条 この条例の規定によりその権限に属することとされた事項のほか、消費者の利益の擁護及び増進に関する重要な事項を調査審議するため、生駒市消費生活審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2審議会は、消費者の利益の擁護及び増進に関する重要な事項について、市長に意見を述べることができる。
3審議会は、委員10人以内をもって組織する。
4委員は、学識経験のある者その他市長が必要と認める者のうちから市長が委嘱する。
5委員の任期は、2年とする。ただし、再任されることを妨げない。
6委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
7審議会は、必要があると認めるときは、部会を置くことができる。
8審議会は、規則で定めるところにより、部会の決議をもって審議会の決議とすることができる。
9委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
10前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

(委任)

第22条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

附 則

(施行期日)
1この条例は、平成20年4月1日から施行する。
(生駒市物価及び消費者保護対策協議会条例の廃止)
2生駒市物価及び消費者保護対策協議会条例(昭和45年3月生駒市条例第15号)は、廃止する。
(生駒市の特別職の職員で非常勤のものの報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部改正)
3生駒市の特別職の職員で非常勤のものの報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例(昭和31年11月生駒市条例第12号)の一部を次のように改正する。
別表中「物価及び消費者保護対策協議会委員」を「消費生活審議会委員」に改める。


■・奈良弁護士会・制定にあたっての意見書

2007年(平成19年)4月18日
生駒市長  山 下  真  殿
奈良弁護士会    会 長 田 中 啓 義
同消費者保護委員会 委員長 兒 玉 修 一


生駒市消費者保護条例制定にあたっての意見書

 近年の高度情報化、国際化、高齢化及び規制緩和の進展に伴い、消費者の選択の幅が広がると同時にリスクも高まり、消費者被害は増加及び複雑・多様化、広域化しています。
 このような状況のなか、国は消費者基本法を大幅に改正し、これを受けて、奈良県をはじめとする多くの地方公共団体における消費生活条例の改正が相次いでおります。生駒市におかれましても、今般、消費者保護条例を制定される運びとなり、条例案が作成されているとのことですので、実効性のある条例の制定及び運用を最初に要望し、下記の通り、条例制定にあたっての意見を述べます。




第1 事業者名等の公表及び情報提供の手続きについて

 生駒市消費者保護条例案(以下、単に「条例案」という)においては、<1>市長による不当な取引行為を是正するために必要な措置を講じるべき旨の勧告に事業者が従わなかったケースにおいて当該事業者名等を公表する場合には、当該事業者に通知し、意見を述べる機会を付与すると共に、生駒市消費者保護対策協議会(以下、単に「協議会」という)の意見を聞くこととされている(条例案16条)。また、<2>同じく市長が、不当な取引行為による被害の発生及び拡大を防止するために事業者名等の情報を提供する場合にも、同様とされている(条例案17条2項)。
 しかし、消費者被害の未然防止・拡大防止のためには、できる限り早期に「公表」、あるいは「情報提供」が行われる必要がある。ところが、事業者に対する通知 及び意見陳述の機会の付与に加えて、協議会に事前の報告まで要することとすると、手続保障の観点からは妥当なのかもしれないが、相当な時間を要することとなり、結局、本来の目的である消費者被害の未然防止、拡大防止を果たせなくなってしまうおそれがある。
 そこで、協議会への報告は、事後であっても足りるものとすべきである。

 <当会条例案>
第16条
 市長は、・・・
 市長は、前項の規定による公表をしようとするときには、予め、当該公表に係る者にその旨を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。
 市長は第2項の規定による公表をしたときは、遅滞なく、その旨及びその公表の内容を協議会に報告しなければならない。

 <参考>

 ※京都市消費生活条例
第26条
 市長は、第3条1項1号から3号にまで掲げる権利の侵害の発生又はその拡大を防止するために緊急の必要があると認めるときは、商品等の名称、事業者の氏名又は名称その他必要な事項を公表することができる。
 前項の規定による公表は、同項の権利の侵害の発生又はその拡大を防止するために必要な限度を超えないものでなければならない。
 市長は第1項の規定による公表をしたときは、遅滞なく、その旨及びその公表の内容を第36条に規定する審議会に報告しなければならない。


第2 不当な取引行為の禁止について

 不当な取引行為については、新たな不当な取引行為形態が生じた場合に迅速に対応ができるように、条例では不当な取引行為を行うことが禁止されることのみを概括的に定め、その具体的内容については、規則、あるいは告示で定める地方公共団体が多い。
 条例案のような形で、不当な取引行為を限定列挙し、一般的な条項を設けないとした場合(12条)、将来的に条例の規定にはないような形態による不当な取引行為が発生したときに、これに対処するにあたっては、条例そのものの改正まで必要になってしまう。これは、極めて煩瑣であり、また、結果として消費者保護に欠ける結果となるおそれがある。
 したがって、条例としては、より一般的な形で定めておくべきである。

 <当会条例案>
第12条
 事業者は、その供給する商品等の取引に関し、消費者の知識、経験又は判断力の不足に乗じて消費者を取引に誘引し、又は消費者に取引を強制する行為その他の消費者の利益を害するおそれがある行為として市長が指定するもの又は法令、契約に反する行為(以下「不当な取引行為」という。)を行つてはならない。

 <参考>

 ※奈良県消費生活保護条例
  (不当な取引行為の禁止)
第14条
 事業者は、その供給する商品等の取引に関し、消費者の知識、経験又は判断力の不足に乗じて消費者を取引に誘引し、又は消費者に取引を強制する行為その他の消費者の利益を害するおそれがある行為として知事が指定するもの(以下「不当な取引行為」という。)を行つてはならない。


第3 不当な取引行為の禁止の具体的内容について


 ところで、条例案では、不当な取引行為の具体的内容については市規則において定めるものとされている(12条)。
 そこで、近年における消費者保護関係法令の発展、及び消費者被害の実態に照らした場合、市規則には、少なくとも次のような規則が設けられるべきである。特に、適用の可否にあたって疑義を生じさせない為に、可能な限り具体的な文言を用いるべきである。

 勧誘を希望しない消費者に勧誘すること

(1)  勧誘を希望しない消費者に勧誘すること(不招請勧誘)が、きっかけとなる消費者被害が後を絶たない。国民生活センターも「不招請勧誘の制限に関する研究会」(委員長石戸谷豊弁護士)を設置し、不招請勧誘を制限すべきだとする報告書をまとめている(平成19年2月26日付同センター記者説明資料)。
 不招請勧誘の定義及び規制方法は、必ずしも確立しているとはいえないが、概ね、オプトイン規制(希望する人へのみ勧誘してよい)、オプトアウト規制(拒絶の意思表示を表示した消費者へは勧誘してはならない)の2種類に分けられる。
 さらに、両者の中間的なものとして、勧誘に先立って、その勧誘を受ける旨の意思の確認をすることをしないでする勧誘をしてはならない、あるいは、消費者に契約を締結する意思がない旨の意思表示の機会を与えることなくする勧誘をしてはならないといった規制方法をとる法律、条例も存在する。
(2)  ところで、各地の消費生活条例においては、オプトアウト規制が多い。しかし、消費者に対する拘束力が強いとされている直接対面したり言葉を交わしたりする方法による勧誘(訪問販売、電話勧誘販売など)については、オプトアウト規制のみでは必ずしも十分な規制とはいえず、例えば、金融商品販売法ではオプトイン規制も導入されているところである。
 もっとも、現時点で、生駒市消費者保護条例において、一般的な形で、オプトイン規制を導入することは、現実的には困難を伴う。
(3) 
 そこで、条例では、オプトイン規制にまでは踏み込まないこととし、例えば、生駒市において、市民各人に対し、「訪問販売お断り」といった内容のステッカーを配布するなどの方法を介することで、少なくとも訪問販売については、実質的にオプトイン規制に近い効果をあげる運用を目指すべきである。
 実際、大阪府寝屋川市、同府枚方市楠葉朝日地区等でステッカー配布、貼付けが行われている。
 なお、念のため指摘すると、ステッカーの文言に関して「悪質訪問販売お断り」などとした場合、「悪質ではない訪問販売は対象外なのか」といった疑義が生じることになる。したがって、単に「訪問販売お断り」とするのが適当である。

 <当会規則案>

 消費者が契約を締結する意思がない旨を表明しているにもかかわらず、又はその意思表示の機会を与えることなく、消費者の住居、勤務先その他の場所に訪問し、電気通信手段を介して広告宣伝を送信し、若しくは電話すること。

 <参考>

 ※奈良県消費生活条例第14条第1項の規定による不当な取引行為の指定
 一 契約締結の勧誘に係る不当な取引行為
 1 消費者に迷惑を及ぼし、又は欺いて接触し、勧誘する行為
   ・・・・・
(二)
消費者の意に反した勧誘

消費者が契約を締結する意思がない旨を表明しているにもかかわらず、又はその意思表示の機会を与えることなく、消費者の住居、勤務先その他の場所に訪問し、若しくは電話すること。

(三)
電気通信手段を介した不当な勧誘

商品等に関し、消費者が電気通信手段を介して通信する広告宣伝の提供を受けることを希望しない旨の意思を示したにもかかわらず、又はその意思を示す機会を与えることなく、一方的に広告宣伝を反復して送信すること。

 ※金融商品取引法38条
 (禁止行為)
  第38条 ・・・・
 金融商品取引契約(・・・政令で定めるものに限る)の締結の勧誘を要請していない顧客に対し、訪問し又は電話をかけて、金融商品取引契約の締結を勧誘する行為
 金融商品取引契約(・・・政令で定めるものに限る)の締結につき、その勧誘に先立って、顧客に対し、その勧誘を受ける旨の意思の確認をすることをしないでする勧誘をする行為


 消費者の資力・・・等に適合しない内容、量、期間の契約を締結すること
(1)  現実の条例、規則の適用にあたっては、当該契約の内容や取引の対象となった物品等の量、あるいは期間が、当該消費者に適合しないかどうかの判断、つまり適合性の有無の判断には困難を伴う。
(2)  そこで、原則的に適合しないと判断できる基準を規則で明らかにしておき、その基準に該当する場合には、適合性の欠如が事実上推定されることとすべきである。これにより、迅速な処理が可能となる。
 一方で、規則に定める基準に該当しているにもかかわらず、「適合性を有している」と事業者が主張する場合には、事業者自身に反証を求めることで、例外的ケースには十分に対応できる。
(3)  なお、貸金業の規制等に関する法律(昭和58年5月13日法律第32号。以下「貸金業法」という)は、いわゆる平成18年改正(「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」−平成18年12月20日法律第115号。現在、一部未施行)によって、貸金業者に借り手の返済能力の調査を義務づけ、過剰貸付を禁止し、自らの貸付金額と他の貸金業者の貸付残高の合計が年収等の3分の1を超えることとなる貸付を原則禁止したことが参考になる(改正13条、及び同条の2ほか)。
 また、貸金契約のみならず、立替払契約についても、その対象とすべきである。

 <当会規則案>

 消費者の返済能力を著しく超えることが明白であるにもかかわらず契約を締結させること。但し、金銭の貸付け及び販売信用を含む総債務額(既存債務を含む)に対する年間支払総額が年収の3分の1を超える与信、無担保(担保が人的保証だけである場合を含む)の貸付、与信にあたっては、消費者の返済能力を著しく超える取引であると推定される。

 <参考>

 ※改正貸金業法
 (返済能力の調査)
第13条
 貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合には、顧客等の収入又は収益その他の資力、信用、借入れの状況、返済計画その他の返済能力に関する事項を調査しなければならない。
 貸金業者が個人である顧客等と貸付けの契約(極度方式貸付けに係る契約その他の内閣府令で定める貸付けの契約を除く。)を締結しようとする場合には、前項の規定による調査を行うに際し、指定信用情報機関が保有する信用情報を使用しなければならない。
 貸金業者は、前項の場合において、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、第1項の規定による調査を行うに際し、資金需要者である個人の顧客(以下この節において「個人顧客」という。)から源泉徴収票(所得税法(昭和40法律第33号)第226条第1項に規定する源泉徴収票をいう。以下この項及び第13条の3第3項において同じ。)その他の当該個人顧客の収入又は収益その他の資力を明らかにする事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録として内閣府令で定めるものの提出又は提供を受けなければならない。ただし、貸金業者が既に当該個人顧客の源泉徴収票その他の当該個人顧客の収入又は収益その他の資力を明らかにする事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録として内閣府令で定めるものの提出又は提供を受けている場合は、この限りでない。

次に掲げる金額を合算した額(次号イにおいて「当該貸金業者合算額」という。)が50万円を超える場合

当該貸付けの契約(貸付けに係る契約に限る。ロにおいて同じ。)に係る貸付けの金額(極度方式基本契約にあつては、極度額(当該貸金業者が当該個人顧客に対し当該極度方式基本契約に基づく極度方式貸付けの元本の残高の上限として極度額を下回る額を提示する場合にあつては、当該下回る額))
当該個人顧客と当該貸付けの契約以外の貸付けに係る契約を締結しているときは、その貸付けの残高(極度方式基本契約にあつては、極度額(当該貸金業者が当該個人顧客に対し当該極度方式基本契約に基づく極度方式貸付けの元本の残高の上限として極度額を下回る額を提示している場合にあつては、当該下回る額))の合計額

次に掲げる金額を合算した額(次条第2項において「個人顧客合算額」という。)が100万円を超える場合(前号に掲げる場合を除く。)

当該貸金業者合算額
指定信用情報機関から提供を受けた信用情報により判明した当該個人顧客に対する当該貸金業者以外の貸金業者の貸付けの残高の合計額

 貸金業者は、顧客等と貸付けの契約を締結した場合には、内閣府令で定めるところにより、第一項の規定による調査に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。
 前各項の規定は、極度方式基本契約の極度額(貸金業者が極度方式基本契約の相手方に対し当該極度方式基本契約に基づく極度方式貸付けの元本の残高の上 限として極度額を下回る額を提示している場合にあつては、当該下回る額)を増額する場合(当該極度方式基本契約の相手方の利益の保護に支障を生ずることがない場合として内閣府令で定めるものを除く。)について準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。

 (過剰貸付け等の禁止)
第13条の2
 貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合において、前条第1項の規定による調査により、当該貸付けの契約が個人過剰貸付契約その他顧客等の返済能力を超える貸付けの契約と認められるときは、当該貸付けの契約を締結してはならない。
 前項に規定する「個人過剰貸付契約」とは、個人顧客を相手方とする貸付けに係る契約(住宅資金貸付契約その他の内閣府令で定める契約(以下「住宅資金貸付契約等」という。)及び極度方式貸付けに係る契約を除く。)で、当該貸付けに係る契約を締結することにより、当該個人顧客に係る個人顧客合算額(住宅資金貸付契約等に係る貸付けの残高を除く。)が当該個人顧客に係る基準額(その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものを合算した額に3分の1を乗じて得た額をいう。次条第5項において同じ。)を超えることとなるもの(当該個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約として内閣府令で定めるものを除く。)をいう。


 立替払契約について
(1)  多くの消費者被害事案においては、立替払契約が利用されている。
 その背景には、事業者(販売店)としては、立替払契約の手法をとることで、消費者に対し、代金支払の現実的負担感を与えることのないままに高額の契約をさせることができるという事情がある。一方、立替払契約を取り扱っている各信販会社の立場からした場合、悪質な事業者に関する立替払契約に関してはその手数料収入も高額になることが多く、信販会社としての利益も大きいという側面もある。
(2)  ところで、消費者が、各消費者被害事案において、事業者(販売店)の違法行為の存在を理由に、立替払金の支払を拒否することがある(支払停止の抗弁)。しかし、信販会社は、「事業者(信販会社からすれば「加盟店」にあたる)の違法行為を知らなかった」などの理由から、消費者に対し、立替払金の支払いを請求し続けることが多々ある。
 また、事業者に違法行為の存在することが明らかで、各地の消費生活センターや弁護士が介入するなど社会問題化してしまったような例外的なケースでさえ、信販会社は、「既払金を返還せず、せいぜい未払債権を放棄するに留まる」といった形で処理されてしまうのが大半である。
(3)  さらに、事業者が、破産手続等の開始、あるいは事実上の倒産により消滅し、消費者が事業者の違法行為を明らかにすること自体困難となったり、仮にこれを明らかにできても、事業者が「倒産」してしまった結果、その損害の回復を図ることは不可能となったケースも多数存在する。
   例えば、<1>「販売した宝石を5年後に販売価格で買い戻す」という特約付でダイヤを立替払契約を利用して販売し、その後、倒産した「ココ山岡事件」、<2>いわゆる「モニター商法」にかかる「ダンシング事件」、<3>節電効果があるとして節電機を立替払契約を利用して販売し、その後、倒産した「アイデック節電機商法事件」、<4>原画の版権料を支払うとして絵画を立替払契約を利用して販売し、その後、事実上倒産した「原画版権商法事件」、<5>呉服等を展示会等で強引な販売方法で立替払契約を利用して販売していた愛染蔵、及び「たけうち」グループの倒産などと枚挙にいとまがない。
(4)  以上のような状況からすれば、不当な取引行為を行う事業者(販売店)のみならず、これに伴う立替払契約についても、不当なものに関しては、生駒市としても迅速に対応できる規定を設けるべきである。

 <当会規則案>

 商品等を販売する事業者等の行為が不当な取引行為に該当することを知りながら、又は与信に係る加盟店契約その他の提携関係にある事業者を適正に管理していれば、そのことを知り得たにもかかわらず放置し、立替払契約等を締結すること。

 <参考>

 ※奈良県消費生活条例第14条第1項の規定による不当な取引行為の指定
 2 消費者に不適合な内容の契約
(1)
・・・
(5)
不当な取引行為と一体となった与信契約

商品等を販売する事業者等の行為が不当な取引行為に該当することを知りながら、又は与信に係る加盟店契約その他の提携関係にある事業者を適正に管理していれば、そのことを知り得たにもかかわらず放置し、与信契約等を締結すること。




以上 

 



■・市長日記 : 消費者保護条例(案)について答申を受けました!

2007年11月13日 消費者保護条例(案)について答申を受けました!

生駒市では、昭和49年に消費生活センターを設置し、消費生活相談、消費者被害の救済、各種啓発や情報提供など消費者の保護に関する業務を行っておりますが、昨今、高齢者の悪質リフォーム高額被害、パソコン・携帯電話等による架空請求、最近では外国語会話教室の株式会社ノヴァのような大量・長期契約による被害等、消費者トラブルは増加し、また手口が巧妙化している現状です。

そこで、国においては平成16年6月に「消費者基本法」が制定され、平成18年6月に「消費者契約法」が改正され、県においても平成18年4月に奈良県消費生活条例が改正されました。 このような状況を踏まえ、市としても、条例を制定し、消費者問題を一日も早く解決するため、市民の消費生活を守る施策を図っていきたいと考え、昨年11月にその条例案について「生駒市物価及び消費者保護対策協議会」に私から諮問しておりました。

当該協議会においては、約1年にわたり協議を重ねていただき、先日、「生駒市消費者保護条例(案)」の答申を受けました。この答申は、市民の皆さんが安心して消費生活を送ることができる環境を整備するため、答申されたものです。

この答申・提言内容の主なものは、
(1) 市民(消費者)が自ら進んで情報を収集し、消費者相互で連携を図り、市や関係機関への情報提供に努める。(住民自治の精神)
(2) 市は、市民(消費者)からの相談や情報提供により、悪質な事業者を調査し、勧告に従わない場合は氏名公表をすることができる。(公表されることで、商売が成り立たなくなり、生駒市で悪徳業者が営業できなくなる。)
(3) 自治会等の協力のもと、訪問販売等お断りのステッカーを配布する。(ステッカーを貼ってあるお宅への訪問販売は条例違反となりうる。)
(4) 市は、消費生活センターの機能を拡充させる。

また、その他として、
(1) 市は、条例の周知啓発を図ること
(2) 市は、市民(消費者)の自主的な行動を促進するため、自治会、学校等への出前講座を行うこと

1「市民相互の連携」、2「市の調査・公表・施策」、3「全市民」という連携体制を図ることにより、「悪質な事業者を生駒市から閉め出し、寄せ付けないことができる」という内容であります。

それを実行可能なものとするために、市民の皆さんには、地域ぐるみの自主的な活動、またご協力を是非ともよろしくお願いします。

市では、この条例(案)を早急に議会に提案し、条例を制定して、市民の皆さんが安心して消費生活が送れるよう、努めてまいりたいと考えています。