牛乳が製品になるまでのことを教えて・・・_?

紙容器やビンに詰められて、市販されているほとんどの牛乳は、牛から搾られた生乳を原料として殺菌処理しています。
__生乳はとても栄養豊富で、細菌が増殖するのに格好の培地にもなります。そのため、牛乳を私たちが安心して利用するため、加熱殺菌され、細菌や成分に関する厳密な検査を行い、出荷されています。

栃木県三和酪農業協同組合提供「搾乳〜製品イメージ」
「搾乳〜製品イメージ」提供_:_栃木県三和酪農業協同組合


酪農家で飼われている乳牛は、朝と夕の2回ミルカーによって搾乳され、直ちに冷却しバルククーラーと呼ばれる貯乳施設で冷却保存されます。
●集乳について
集乳とは搾った生乳を処理工場に輸送する作業です。昔は生乳を牛乳缶に入れて輸送を行っていましたが、現在は、各酪農家のバルククーラーから乳業工場へ、タンクローリーで5℃以下に冷却され運ばれます。
●受乳検査について
工場まで運ばれた生乳は、受乳室のプラットホームでトラックから工場へと運ばれ、受乳タンクに直接ポンプで送り込まれます。その際、原料乳として受入が可能かどうかの検査が行われます。
検査は、外観、風味、温度、比重、酸度、無脂乳固形分、細菌数などの検査が行われます。
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●清浄化について
生乳内の微細なゴミや異物をタンクに貯乳される前に、清浄機で処理して、それを除去します。これは強力な遠心力を用いて、細かいゴミや白血球、乳腺の上皮細胞などを連続的に分離、除去します。


【牛乳の殺菌】
わが国では、殺菌について食品衛生法の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)により、62〜65℃で30分間加熱殺菌するか、またはこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること」と定められています。
牛乳の殺菌方法は大きく分けて
(1)低温保持殺菌法(LTLT法)(low-temperature long-time pasteurization)
この方法は低温殺菌法とも低温保持殺菌とも呼ばれています。従来はパスチュライザー(2重構造)で殺菌する方法でしたが、現在では、プレート方式兼用型あるいはチューブラー方式等による熱交換する殺菌法があります。62〜65℃で加熱し、そのまま30分間保持する方法です。この方法で有害な菌はすべて死滅しますが原料乳の品質は、特に優れたものに限られます。
しかし処理時間が長いため生産効率が悪く、日本においては普及率は高くありませんが、諸外国では飲用牛乳の代表的処理方法です。
(2)高温保持殺菌法(HTLT法)(high-temperature long-time pasteurization)
牛乳を75℃以上に加熱殺菌し、15分以上保持する方法です。
(3)高温短時間法(HTST法)(high-temperature short-time pasteurization)
欧米では一般的な方法で71〜75℃で15〜40秒または、75〜85℃で15〜20秒加熱殺菌で処理する方法で、LTLT殺菌法と同等の殺菌効果があります。
機械装置はプレート方式になっています。この方法は密閉式であるため、処理中の細菌による汚染の心配がなく、大量に処理できるので高能率です。
(4)超高温短時間殺菌法(UHT法)(ultrahigh-temperature pasteurization)
現在、日本では95%以上がこの方法を採用しています。一般に管型又はプレート型の関節加熱方式が広く普及しており、プレート型ではまず第一加熱部で80〜85℃で1分程度の予備加熱が行われます。そのあと、熱交換により120〜130℃で2〜3秒間殺菌処理する方法です。100 ℃を超す殺菌温度のため、滅菌といってもよいほど完全に細菌及び微生物を死滅させます。
(5)超高温滅菌法UHT法
超高温短時間殺菌法と同様に、140〜150℃で3〜5秒の加熱処理を行うので、生乳中の細菌はすべて死滅し、滅菌状態になります。超高温滅菌法は加熱処理後、無菌的に充填を行うので殺菌法ではなく無菌法と呼ぶことがあります。この方法はよく知られているLL牛乳などを製造するときに用いる方法です。

牛乳の殺菌原理としては、殺菌に関わる製造工程は、総合衛生管理製造過程(HACCPシステム)によると、重要管理点に設定されています。従って乳業工場としては、最も注意を要する工程になっています。


【牛乳のホモゲナイズ】
市販されている牛乳がクリーム分離(クリームライン)を起こさず、安定した成分のまま提供されるため、また、消化吸収をよくするために、乳脂肪中の脂肪球を細かく砕き、分離・浮上するのを防ぎ安定した状態にすることを均質化(ホモゲナイズ)といい ます。
この処理で、ホモジナイズしない牛乳よりも少し薄くなったように感じます。
よく農家の搾りたての牛乳と市販牛乳は味が違うという声を耳にしますが、原因はこれです。

わが国は1935年頃からこの方式が導入されて以来、牛乳の殆どが「ホモゲナイズミルク」として販売されています。しかし逆に「ノンホモ」としてホモゲナイズしていない牛乳も、商品多様化の一環として販売されています。時間が経過すると乳脂肪分(クリームライン)が浮上しますが、これを特色としているわけです。

牛乳の脂肪球の粒子は3〜7ミクロン(1/1000o)ですが均質化することにより、1ミクロン以下になります。
このために脂肪球の粒子が細分化され表面積が大きくなります。
したがって牛乳が胃腸の中で消化液に広く接するので消化が良くなり、そして蛋白質(カゼイン)もソフトカードになるので更に消化がよくなります。
このように牛乳をよく消化させる方法として最も有効な手段です。


【公正マークについて】
公正マークとは、消費者の適性な商品選択ができることと、乳業界の公正な競争を確保することを目的として設定されたものです。
このマークの表示された製品は「飲用乳の表示に関する公正競争規約」にもとづいて製造された飲用乳であることを証明し、その製品の中身について容器やキャップに正しい表示がなされている事を示します。
この公正競争規約は、1968年に制定された、乳業界の自主規制で「不当景品及び不当表示防止法」の規定により公正取引委員会の認定を得て作られました。

この規約では、飲用乳の表示項目を「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」や計量法にもとづき、一括表示には、商品名、種類別、主要原料名(加工乳、乳飲料)殺菌温度及び時間、期限表示、内容量、製造所及び住所、要冷蔵、公正マークなどを記載し、表示位置、活字の大きさ、禁止事項など細かく規定されています。

この規約の運営は全国飲用牛乳公正取引協議会が行い、規約に従い適性な表示をしていると認められる製品に公正マークが表示されます。マークがついている製品に対して、成分、内容量など年4回自主的に認定検査機関が、更に協議会では、随時市販品の試買検査を行うと共に、デザイン及び表示事項についてもチェックをしています。


【総合衛生管理製造過程(HACCP)マークについて】
HACCPシステムとは、牛乳を製造するに当たり、原料乳の受入れから製品が出来上がるまでの一連の製造過程において、製品の安全を確保するために、特に重点的に管理する必要な箇所、例えば殺菌工程など重要管理点(CCP)と定め、細かい管理基準、監視システムを集中的に管理し、その管理内容の全て記録する方法です。

HACCPは、Hazard Analysis and Critical Control pointの頭文字をとったもので、危害分析・重要管理点と訳され、米国航空宇宙局(NASA)が宇宙食の衛生・安全管理を行う目的で考案されました。総合衛生管理製造過程は、危害防止をするため、このシステムの考えを牛乳の製造に応用したものです。

総合衛生管理製造過程は、このHACCPシステムを基礎とした牛乳の衛生管理方法で、食品衛生法第7条に基づき厚生大臣により承認を受けた工場のみがパックに記載することができます。この制度は1998年より承認されました。