厳密な検査

原料乳を受け入れるときの検査
___牛乳・乳製品は、原料である生乳の品質が、できあがった製品の品質に大きく影響します。工場では原料乳を受け入れる際、温度を測定し、厳密な検査を行っています。

官能検査色や風味を調べます。
___飼料などが原因でおこる風味異常は、科学的な検査では検出することができないので、経験豊かな検査員が味、香りに異常がないかを調べます。

理化学検査___アルコール試験
___70%アルコールと原料乳を等量混ぜ、凝固の有無を見ます。保存状態の悪い乳や、体調の悪い乳牛から搾った乳、初乳(仔牛を出産した直後の乳)などはタンパク質が凝固するので見分けることができます。

成分検査乳脂肪分、全固形分、酸度などを測定します。
___測定は『乳及び乳製品の成分規格等に関する省令』で定められた方法(公定法)を基準にして行います。最近は精度の高い準公定法扱いの迅速測定機器も使われています。
【乳脂肪率】生乳の取り引きの指標としても利用されます。
【全固形分】水分以外の乳成分の量。牛乳類に表示されている無脂乳固形分(牛乳から乳脂肪分と水分を除いた成分)は、全固形分から乳脂肪分を引いて求めます。
【酸度】鮮度のめやすになります。

細菌検査:顕微鏡で直接、細菌の数を数え、検体1ml中の細菌数を算出します。現在は搾乳から工場受け入れまでの衛生管理がゆきとどき、原料乳中の細菌数は少なくなっています。

抗生物質の検査抗生物質が検出された場合は、受け入れません。

体細胞の検査:乳牛の白血球などの体細胞数を顕微鏡で検査します。
【体細胞数】というのは簡単にいうと、牛乳に含まれる『白血球の死骸の量』と『ばい菌の数』です。
乳牛の体調がよいと、これが低くなります。また、【乳房炎】といって、乳房にバイキンが入って炎症を起こす病気になることなのですが、こういう時も体細胞数はあがります。

このように、原料乳はいろいろな検査をへて、合格した原料乳だけを工場のタンクに受け入れます。そしてこの検査結果は原料乳の合否を判定するために利用するだけでなく、酪農家がよりよい原料乳を生産するための資料としても利用されています。

また、★牛乳の安全性の面から

農薬については、乳業会社が定期的に検査しています。現在、牛乳中に残留をみることはありません。
___最近では、食品の製造において、HACCPシステムにより、総合衛生管理製造過程という厚生省の承認制度を取り入れる工場が増えています。これは原料から製造・加工にいたるすべての工程でおこりやすい危害を事前に予測して、そのプロセスを重点的に管理するシステムです。
___牛乳の製造にもこのシステムが取り入れられていますが、牛乳では農薬による危害がおこりえないとの観点から、HACCPの検査項目からもはずされています。
___外国から輸入される飼料中の農薬についても、国内の基準にあっているかどうか、厳しくチェックされています。

抗生物質については、牛乳中に残留しているのではと心配する人もありすが、乳業会社は、受け入れる原料乳を毎回、厳密に検査しています。
___酪農家が抗生物質を使用するのは、主に乳牛の乳房炎の治療などですが、この場合、薬剤は青色に着色してあり、牛乳が青く染まるので出荷することはできません。また、酪農組合などの集乳所、牛乳工場では毎日厳しい受け入れ検査を行っています。
___抗生物質が検出されれば、その乳は返却され、原因となった酪農家が莫大な費用を弁償しなければならないので、厳しい自己管理をしています。

___抗生物質は乳牛に直接投与するものなので、投与を中止してから72時間以降でなければ出荷してはならないと決められています。また、その後も検査をし安全が確認されたうえで出荷しています。