カルシウムを摂るために飲んだ牛乳は、かえって体内のカルシウム量を減らすのですか?

とんでもない話

そんなことはありません。牛乳を飲むことによって体内のカルシウム量が減るようなことはありません。

体内のカルシウム量は体重50kgの人で約1kgです。そのカルシウムの99%以上は骨と歯にあり、残りの1%未満が血液や細胞の中にあります[注7]。

骨のカルシウムと血液中のカルシウムは絶えず交換されており、血液中のカルシウム濃度はホルモン(カルシトニン、副甲状腺ホルモン)やビタミン(活性型ビタミンD)の働きにより、ほぼ10mg/?に保たれています[注7]。

牛乳を飲んだりして血液中のカルシウム濃度が上がると、カルシトニンの働きにより骨から血液中に出てくるカルシウムの量が少なくなります。すなわち血液中のカルシウム濃度が上がるとカルシウムは骨に蓄積され、体内のカルシウム量が減るというようなことはありません。

日本人の多くはカルシウムの摂取量が不足しています。カルシウムはもともと消化吸収率の低い栄養素ですが、牛乳では牛乳中のたんぱく質であるカゼインの消化によって生じるカゼインホスホペプチド(CPP)や乳糖の働きでカルシウムの吸収率が高められています[注8]。

なお、牛乳のカルシウム吸収率については日本人の若年女性を対象とした試験結果があります。それによると、牛乳は40%、小魚33%、野菜19%と牛乳のカルシウムの吸収率が優れていると報告されています [注9]。


[注7]鈴木継美・和田攻編「ミネラル・微量元素の栄養学1994年」(第一出版) 73ページ・297ページ
[注8]内藤博「日本栄養・食糧学会誌」1986年39巻6号433-439ページ
[注9]上西一弘・江澤郁子他「日本栄養・食糧学会誌」1998年51巻5号259-266ページ