Q10
牛乳に含まれるリンがカルシウムの吸収・利用を妨げることはありませんか?

牛乳のリンはカルシウムの吸収・利用には問題なく、<BR>骨や歯の形成・維持に適切な比率で含まれています。

牛乳中のリンの多くは、リンたんぱく質であるカゼインの構成成分として存在し、カルシウムを介してカゼインミセルの構成に寄与しています。これらのリンはカゼインの消化の過程で、カゼインホスホペプチド(CPP)として遊離され、カルシウムの吸収を助けます。

カルシウムの利用において適量のリンは必要不可欠な存在です。

カルシウムの利用において適量のリンは必要不可欠な存在です。市販のカルシウム剤を使った動物実験でカルシウムの吸収・利用率を検討したところ、炭酸カルシウムは天然ボーンアッシュ(リンが含有されている)に比べて消化吸収率は高かったが、大腿骨でみた骨量・骨破断力の上昇は低く(図・実験1)、炭酸カルシウムにリン酸塩を加えてリンのレベルを上げると骨量・骨破断力が上昇するという結果が報告されています(図・実験2)。

リンの摂取量が少ない場合、カルシウムの吸収は良くなりますが、吸収されたカルシウムは骨に沈着することなく、尿から排泄されてしまうためだと考えられます。

ただし、カルシウムの摂取量が少ない人がリンを過剰に摂取すると、副甲状腺ホルモン(パラサイロイドホルモン)の働きで骨からカルシウムが溶け出しやすくなり、血管壁や腎臓などの軟組織にカルシウムがたまってしまいます。

このようにリンは、カルシウムの代謝に間接的に影響を与えていますが、通常の食生活ではそれほど問題になることはありません。カルシウムとリンの摂取量の比率(Ca:P)は1:1が理想とされていますが、1:0.5〜2の範囲であれば、カルシウムの吸収・利用に支障がないとされています。牛乳のCa:Pの比は1:0.85であり、カルシウムの吸収・利用にはなんら問題はなく、骨や歯の形成・維持に適切な割合となっています。

なおリンは、加工食品の添加剤などに多用されています。インスタント食品中心の食生活を送っていると、リンの過剰摂取に陥る可能性がありますから注意が必要です。