Q11
牛乳の脂質はカルシウムの吸収を妨げることはありませんか?

飽和脂肪酸はカルシウムの吸収を妨げるといわれていますが、<BR>牛乳の短・中鎖の脂肪酸はカルシウムの吸収に影響を与えません。

たしかにイオン状のカルシウムは、脂肪の消化で遊離する長鎖の飽和脂肪酸と結合して吸収されにくくなる可能性があります。しかし、牛乳脂肪に特徴的に含まれている短鎖・中鎖の脂肪酸はカルシウムの吸収に影響を与えることなく、一方、30%前後含まれる長鎖不飽和脂肪酸は、消化の過程で生じる飽和脂肪酸と結合したカルシウムの吸収を助けます。 、

カゼインホスホペプチド(CPP)と結合したカルシウムは
利用性も高いことが示されています。

牛乳中では、多くのカルシウムはカゼインミセルとして、コロイド粒子に取り込まれて存在します。なお牛乳を加熱すると、それまでイオン状で存在していたカルシウムも一部コロイド粒子に取り込まれて不溶化しますが冷えるとともに元の状態に戻ります。したがってカルシウムの吸収に対して牛乳加熱の影響を云々することは筋違いです。

そもそも牛乳中のカルシウムは、イオン化したものだけが利用されるのではありません。コロイド粒子の中のカルシウムは、カゼイン−リン酸−カルシウムのような複合体をつくっており、消化の過程でカゼインから生じるカゼインホスホペプチド(CPP)と共存して、可溶化状態に保たれながら吸収されます。CPPと結合したカルシウムは利用性も高いことが示されています。このようなメカニズムにおいても、脂肪酸の影響は少ないといわれています。