Q36
老年期の牛乳摂取にはどんな効果が期待できるのですか?

牛乳を摂取することで高齢者の低栄養状態が改善され、<BR>QOLが向上し、寿命が伸びるというデータが報告されています。

かつて粗食は長生きの秘訣だといわれてきました。しかし、高齢者にとって低栄養状態を続けることは、老化を促進させ余命を縮める原因となり、QOLの低下を招きます。特に血清総コレステロールの低値は、死亡のリスクを高めるといわれています。

東京都老人総合研究所の疫学調査では、東京都で最も長寿命地域である小金井市の70歳以上の住人を追跡調査した結果、10年後の生存率は牛乳を毎日飲むグループが、そうでないグループに比べて高かったと報告されています(図)。特に男性の場合は、生存率に15%以上の差が認められています。

牛乳の摂取で血清コレステロール値を適正に維持すると、
抑うつ傾向の予防にもなります。

秋田県で実施された、高齢者(67〜74歳)の低栄養状態を改善するための牛乳飲用習慣の啓発活動の結果、牛乳摂取頻度が維持もしくは増加したグループで、血清総コレステロール値が上昇し、牛乳摂取頻度が減少したグループでは同水準で推移しました。高齢者の血清総コレステロール値を適正に維持することは、抑うつ傾向の予防にもなり、牛乳の摂取が高齢期の心身の維持増進に寄与していることが示されました。

また、寝たきりの高齢者に多い床ずれの発症には、たんぱく質・エネルギーなどの低栄養状態が関与しています。高齢者の床ずれの予防ならびに治療に対する牛乳・乳製品の有効性に関する研究で、牛乳・乳製品を摂取する習慣がないグループは、摂取する習慣があるグループに比べ床ずれの発症が多くみられ、床ずれ発症時の血清アルブミン値は低値を示しました。その結果牛乳・乳製品の習慣的な摂取が、栄養状態を良好に保ち、床ずれの予防と治癒に有効であることが明らかになりました。

高齢者では推定エネルギー必要量(※)は少なくなりますが、各々の栄養成分の推奨量(※)、目安量(※)は大きく変わりません。(※【資料】参照)。より少ないエネルギー量で効率よく必要な栄養素を摂取するには、牛乳は最適な食品といえます。また、高齢者は骨粗鬆症が増えてくるため、カルシウムの補給源としても牛乳の摂取は有効です。