Q49
胃・十二指腸潰瘍には牛乳を積極的に摂取したほうがよいのですか?

乳脂肪は消化が良く、牛乳は胃酸を中和して胃粘膜を保護するため、潰瘍の患者さんが安心して摂取できる食品です。

胃・十二指腸潰瘍は、食物を消化するために分泌される胃酸によって、胃や十二指腸の粘膜が傷害されて部分的に欠損状態になり発症します。胃粘膜には粘液や粘膜バリア、粘膜血流などの防御因子といわれる粘膜を守る機能が備わっています。一方、粘膜を攻撃する因子には、胃酸、ストレス、ピロリ菌、薬剤(解熱鎮痛消炎剤)、活性酸素などがあります。この防御因子と攻撃因子のバランスが崩れることによって、潰瘍が発症するといわれています。潰瘍は薬物治療によって治りますが、再発を繰り返すことが知られています。最近はピロリ菌の感染が注目され、ピロリ菌を除去すると潰瘍の再発率が低下します。

カルシウムには、潰瘍の原因となるストレスに対する抵抗力をつける働きが認められています。

潰瘍の患者さんでは、脂肪は胃酸の分泌を促し、胃の中での停滞時間が長いため、一般的には控えたい栄養成分です。しかし、脂肪は粘膜の修復に必要な材料になるため、適量の摂取は必要です。その点乳脂肪は消化が良く、牛乳には胃酸を中和して胃粘膜を保護する働きがありますから、潰瘍の患者さんが安心して摂取できる食品です。また牛乳のカルシウムには、胃粘膜の攻撃因子となるストレスを和らげる働きがあるといわれています。

胃の切除手術をすると、カルシウムの吸収率が低下します。したがって術後の患者さんにカルシウムの消化・吸収の良い牛乳は最適な食品です。また、冷たい牛乳は口の中でかむようにして飲むと、胃に刺激を与えません。

なお胃・十二指腸潰瘍と胃がんの関係を心配する人がいますが、潰瘍と胃がんはまったく異なる病気です。胃がんは日本人に多いがんですが、牛乳の摂取によって発生率が低下するという疫学調査が報告されています。