【1】牛乳は完全栄養食品か・・・?

厳密にいえば、『完全栄養食品』というものは存在しません。
よく、牛乳と鶏卵を『完全栄養食品』と言う人もいますが、栄養(特にたんぱく質の組成)バランスが良いことから言い慣らされているもので、牛乳にはひとに必要な栄養素のうち、ビタミンC、D、鉄分や食物繊維などが不足しています。

ヒトの母乳は乳児の『完全栄養食品』と言えますが、成人はもとより、幼児にとっても『完全栄養食品』ではありません。

牛乳はあくまでも、ヒトにとっては食品の一つです。
牛乳は(あるいは鶏卵も)、たんぱく質、脂質、炭水化物、各種ミネラルやビタミンを豊富に含み、他の食品に比べて栄養バランスが良く、また、たんぱく質の必須アミノ酸価が高いことから、種々の食品やたんぱく質を栄養評価する際に基準として扱われ、古来比喩的に”完全”栄養食品と言われたりもしました。

牛乳100g中の主要栄養素
エネルギー67kcal
たんぱく質3.3g
脂 質3.8g
炭水化物4.8g
ミネラルカリウム150mg
カルシウム110mg
リン93mg
マグネシウム10mg
ビタミンA(レチノール当量) 39μg
2μg
B10.04mg
B20.15mg
B120.3μg
パントテン酸0.55mg
五訂日本食品標準成分表より

しかし牛乳では、例えばビタミンC、D、鉄分や食物繊維含量等は低く、”完全”栄養食品という表現はあくまでも相対的・比喩的なものです。

ちなみに、『完全栄養食品』を目指した最たるものとしては、育児用こなミルクが挙げられます。

動物界にあっては、何らかの理由で母親から母乳が与えられない仔獣には、厳しい運命が待っています。しかしヒトには知恵がありました。母乳が与えられない乳児に対する母乳代替品として牛乳をベースにして育児用こなミルクを作り出し、今日では安心して人工栄養を行うことができます。