【11】牛乳と糖尿病との関連は・・・?

糖尿病と牛乳との結びつきは、日本人では少ないT型糖尿病について取りざたされていますが、これを否定する知見もあります。

生活習慣病として日本で多く見られるU型糖尿病の場合は、通常の食事療法において1.4単位(牛乳200ml相当)の牛乳・乳製品摂取が奨励されています。

まず、糖尿病にはT型糖尿病とU型糖尿病があります。
T型はインスリン依存症といわれるもの(IDDM:Insulin dependent diabetes mellitus)で、インスリンの分泌量が低いか、または、無いひとで発症し、U型は肥満などが原因で耐糖能が低下したひとで発症します。

IDDMの発症頻度には、著しい人種差がみられ、日本ではT型の発症は少なく、U型が圧倒的多数を占めています。白人にはT型の発症が多いことから、IDDM発症予防の研究が真剣に進められています。

牛乳と糖尿病との結びつきは、最近『牛乳たんぱく質の一つである牛血清アルブミン(BSA)が抗原となって、これに対する抗体が人工栄養児で作られてIDDMの発症を促す』という考えが示されたことに端を発しています。
BSAと膵臓のインスリンを分泌するβ細胞の膜たんぱく質で一部の分子構造が類似しているので、BSAに対する抗体ができると、その抗体が膵β細胞を壊してしまい、結果としてインスリンの分泌を障害するというものです。

わが国の食生活は、過去30〜40年間に著しく変化し、肉類は約3倍、鶏卵は1.5倍、牛乳・乳製品は約2.2倍へと、そ供給量が増加していますが、その間IDDMの発症頻度はそれ程増加していません。
一方、昭和30年代前半に約60%であった母乳栄養率は、人工栄養が進歩し普及した昭和30年代後半から急激に低下して30%以下となり、昭和47年から48年にかけては20%以下になった地域もあったと言われています。しかし、昭和50年代になって母乳栄養が再び増加し始め、調製粉乳の生産量もこの動向を反映して増減しています。

もし、BSAがIDDMの原因であり、母乳栄養比率の上昇によってIDDM発症が抑えられるならば、昭和35年以前に生まれた人々はIDDMが少なく、母乳栄養比率が著しく低下した昭和45年から50年にかけて生まれた人々には発症が多く、さらに昭和50年以降に生まれた人々には再び頻度が低下するはずですが、このような傾向は見出されていません。

日本人のT型小児糖尿病(IDDM)に関して、牛乳たんぱくが関与することはないという研究報告もあります。