わが国で白内障になる最大の要因は老化(加齢)で、65歳では60%が白内障症状であるといわれています。白内障は加齢以外に疾病、光(活性酸素生成)、薬物、外傷、先天性代謝異常などが影響します。牛乳と関係し得る白内障は、先天性代謝異常である『ガラクトース血症』と関わるものと考えられます。 ガラクトース(乳糖の場合には消化されて生じるガラクトース)は、腸管から吸収されると門脈経由で肝臓に至り、ガラクトースキナーゼという酵素で活性化(リン酸が結合)され、ガラクトース-1-リン酸となります。これは更に、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼという酵素の助けを受けてグルコースと反応し、グルコース-1-リン酸に変換され、生体によって利用されます。 新生児ではグルコースとガラクトースが共存した場合には、ガラクトースの方が早く代謝されます。ガラクトースの代謝にはインスリンを必要とせず、またインスリンの分泌を刺激することもありません。更にガラクトースの存在下では、グリコーゲンの合成も促進されると報告されています。 このように、正常な状態では、吸収されたガラクトースはグルコースに変換されるので、血中ではほとんどガラクトースは検出されませんが、ガラクトキナーゼが欠損している場合にはガラクトースが、またはガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損ではガラクトース-1-リン酸が血中に蓄積します。 前者がU型、後者がT型の『ガラクトース血症』です。 『ガラクトース血症』は劣性遺伝するもので、症状にも軽いものから重いものまでありますが、いずれにしてもこのような乳児には乳糖(ガラクトース)を含む通常の育児用粉ミルクはもとより牛乳投与も有害で、乳糖もガラクトースも含まないミルクを出生後早期から投与することで、正常な発育が可能となりました。 日本では昭和52年度から先天性代謝異常のマス・スクリーニングが実施されてきましたが、ガラクトース血症患者の発生数には一定の経年的傾向は認められません。 |