【12】牛乳と白内障との関連は・・・?

白内障の最大要因は老化。
先天性代謝異常『ガラクトース血症』の人が、牛乳を飲むことで白内障となる場合はありますが、正常な代謝においては牛乳が白内障に関わることはないと言えます。

わが国で白内障になる最大の要因は老化(加齢)で、65歳では60%が白内障症状であるといわれています。白内障は加齢以外に疾病、光(活性酸素生成)、薬物、外傷、先天性代謝異常などが影響します。牛乳と関係し得る白内障は、先天性代謝異常である『ガラクトース血症』と関わるものと考えられます。

ガラクトース(乳糖の場合には消化されて生じるガラクトース)は、腸管から吸収されると門脈経由で肝臓に至り、ガラクトースキナーゼという酵素で活性化(リン酸が結合)され、ガラクトース-1-リン酸となります。これは更に、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼという酵素の助けを受けてグルコースと反応し、グルコース-1-リン酸に変換され、生体によって利用されます。

新生児ではグルコースとガラクトースが共存した場合には、ガラクトースの方が早く代謝されます。ガラクトースの代謝にはインスリンを必要とせず、またインスリンの分泌を刺激することもありません。更にガラクトースの存在下では、グリコーゲンの合成も促進されると報告されています。

このように、正常な状態では、吸収されたガラクトースはグルコースに変換されるので、血中ではほとんどガラクトースは検出されませんが、ガラクトキナーゼが欠損している場合にはガラクトースが、またはガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損ではガラクトース-1-リン酸が血中に蓄積します。

前者がU型、後者がT型の『ガラクトース血症』です。
T型のガラクトース血症は、知能障害と白内障を惹き起こし、U型の場合は白内障を惹き起こすのみです。代謝されないガラクトースがガラクチトールに還元され水晶体に留まり、上昇した浸透圧が水分を引き込み、水晶体を傷害するのです。

『ガラクトース血症』は劣性遺伝するもので、症状にも軽いものから重いものまでありますが、いずれにしてもこのような乳児には乳糖(ガラクトース)を含む通常の育児用粉ミルクはもとより牛乳投与も有害で、乳糖もガラクトースも含まないミルクを出生後早期から投与することで、正常な発育が可能となりました。

日本では昭和52年度から先天性代謝異常のマス・スクリーニングが実施されてきましたが、ガラクトース血症患者の発生数には一定の経年的傾向は認められません。
また、、わが国では、牛乳の乳糖と白内障に関する疫学的調査はありません。
なお、ラットにヨーグルトを与えて白内障が見られたという調査は、体重60kgのひとに換算すると、1日に21.6kg〜24kgという、非常に極端な条件を設定した実験であり、通常の食生活における摂取と同列に論ずるべき問題ではありません。