【16】牛乳の高温殺菌で栄養成分に影響はあるのか・・・?

殺菌方法による栄養成分変化については、
差異は認められません。

熱によるたんぱく質の変化については、化学の世界では、物の状態が変わることに対して『変性』という用語を使います。この『変性』という言葉を、あたかも”悪いものに変わる”かのごとく促える向きも多いようですが、この誤解を正しておかねばなりません。

例えば、わたしたちは、肉を生で食べる場合は少なく、火を使って高温で焼いたり、煮たりしますが、この際、肉のたんぱく質は変性を起こしています。加熱調理することで栄養がなくなるわけではなく、むしろ火を通すことで肉のたんぱく質の消化と利用性は高まっています。

牛乳の場合でも、加熱によってたんぱく質は変性を起こします。牛乳たんぱく質のうちカゼインは、熱による変性を受けにくいたんぱく質と言われていますが、ホエーたんぱく質では80℃前後から変性が始まります。
しかし、加熱変性といってもそれぞれのたんぱく質のアミノ酸組成が変わるわけではないので、栄養価の絶対値に変化はありませんが、加熱変性によって消化・吸収が高まるので、相対的に栄養価は上昇します。

なお、日本における牛乳の殺菌方法のほとんどは超高温瞬間殺菌(UHT:120〜130℃、2〜3秒)です。また、日本で販売されている低温殺菌牛乳は低温保持殺菌(LTLT:62〜65℃、30分)であり、EUやオーストラリアで広く販売されているパスチャライズド殺菌(Pasteurized)牛乳(72℃以上、15秒以上)、日本では高温短時間殺菌(HTST)(72℃、15秒以上)とは殺菌条件が異なります。

UHT牛乳と低温殺菌牛乳の風味の差は個人の嗜好に依存します。