【2】牛乳を飲みすぎると病気の引き金になるの・・・?

”過ぎたるは及ばざるが如し”と言われるように、毎日、牛乳だけを多く飲み、偏った食生活をすれば当然、何らかの症状は出るでしょう。
これは牛乳に限らず全ての食品に言えることで、どれほど優れた食品であっても、単一で必要な栄養素を全て摂ることは不可能です。

”疫学”の落とし穴に落ちないでくださいね。
疫学調査には、後方位法と前方位法があります。後方位法は現在の状況の原因を、過去を調査することによって見出そうとするものです。前方位法は現在の状況が未来に与える影響を調査しようとするものです。

例えば、ある大腸癌の後方位疫学調査では、大腸癌患者では牛乳摂取量が多かったと報告された。しかし、両者の間に因果関係があるということが、すぐに結びつくものではありません。

この時の疫学調査では、同時に脂肪摂取の多さの影響が指摘されています。脂肪の摂取量が多くなると胆汁酸の分泌量が多くなり、それに伴って二次胆汁酸の産出量が多くなります。二次胆汁酸は大腸癌の原因物質として知られているので、脂肪の摂取量が多くなることは明らかに大腸癌の危険因子と言えます。

牛乳摂取量の増加と大腸癌はどうして結びつくのでしょうか・・・?。
牛乳の優れた栄養が評価され、消費が増える一方、飽食の時代に入って食生活が乱れ、油脂で加工した食品などが多くなり、通常の食事でも脂肪の摂取量が増加しています。大腸癌の危険因子である脂肪と直接は関係しない牛乳の消費が共に増えたために、牛乳がリストアップされてしまったものと理解されます。

これとは別に、牛乳については、摂取量が多い人ほど胃癌発症頻度の低いことが認知されていて大腸癌との直接的因果関係はないと考えるべきでしょう。

ちなみに、疫学調査により、カルシウム摂取量の多い地域には大腸癌が少なく、摂取量の少ない地方には大腸癌が多いことが分かっています。

どれほぼ栄養バランスに優れた食品であっても、単一の食品に偏った食生活を送ることは生活習慣病の危険因子となり得ます。

繰り返し強調したいのは、これは全ての食品について言えることです。
厚生労働省で1日30食品の摂取を勧めているのは、この栄養バランスを考慮しているからです。