そうではありません。牛乳に含まれているたんぱく質の約80%を占めるカゼインは、胃の中に入ると胃酸や、ペプシンと呼ばれる酵素によりヨーグルトのように固まります。その後、ゆっくりと確実に分解(消化)されます。胃の中で固まるという現象はたんぱく質が酸などの作用により凝集することで、それにより消化酵素が働きにくいと考えるのは間違いです。
少し専門的になってしまいますが、カゼインは牛乳中ではリン酸カルシウムの関与のもと小さな粒子同士がくっ付き合ってコロイド粒子として存在します。その内部はたんぱく質分解酵素が自由に入れる緩やかな構造を持ち、容易に分解されます[注25]。
肉は加熱すると消化されやすくなります。これは加熱によりたんぱく質が変性して消化酵素の作用を受けやすくなるからです。
一方、牛乳中のカゼインは肉のように熱で変性させなくても、そのままの形で消化酵素により容易に消化可能な構造を持つ極めて優れた食品たんぱく質です。
なお、食品のたんぱく質の消化率を比較したデータによると、牛乳は98.8%、牛肉97.5%、鶏卵97.1%と主要なたんぱく質食品の中で牛乳は消化率が最も優れています [注26]。 |