牛乳とライフステージ
牛乳はどのライフステージの
食生活にも推奨できる食品です。


離乳期の早すぎる牛乳摂取には注意が必要ですが、成長期のカルシウム補給、若い女性のダイエット・健康な肌対策、妊婦・授乳期のカルシウム・栄養補給、壮年期の生活習慣病予防、更年期の骨粗鬆症予防、高齢期の低栄養状態の改善など、牛乳は各ライフステージで、健康を維持・増進するためには欠かせない有効な食品です。



アレルギーを避けるため、牛乳そのものは生後1年を過ぎてから与えるのが望ましいとされています。

子育てをする母親にとっての悩みの種は、離乳食へのスムーズな移行です。なかでも食物アレルギーが多いのは牛乳と卵です。乳幼児は消化機能や免疫機能が未発達なため、牛乳や卵にかぎらずたんぱく質をたくさん摂取すると、アレルギーを起こす危険性があります。したがって牛乳そのものを与えるのは生後1年を過ぎてからが望ましいとされています。万一アレルギーが発症した場合には、その食品の摂取は中止しなくてはいけません。牛乳アレルギーは多くの場合、2〜3歳までに治癒するといわれています。


成長期におけるカルシウム摂取が将来の骨粗鬆症の予防に大きく貢献します。

飽食の時代にあって、朝食の欠食、ファストフード、スナック食品や清涼飲料などの過剰摂取など、青少年の食生活の乱れが指摘されています。

そこで成長期の健康的なライフスタイルを取り戻すために、牛乳の役割がクローズアップされています。牛乳は栄養バランスのよい食品であるだけでなく、牛乳の摂取量が身長の伸びに関係しているというデータが報告されていますし、体脂肪率を低下させ肥満を予防する働きがあることがわかっています。

さらに成長期にカルシウムの摂取を怠ると、健康を損なうとともに、数十年後に骨粗鬆症という大きなツケを払うことになるかもしれません。骨粗鬆症は、骨の量(骨量)が低下して起こる病気で、老年期の女性に多く発症します。

骨量が一生のうちで最大になる最大骨量(ピーク・ボーン・マス)に達する年齢は、18歳くらいです。この時期にカルシウムを十分に摂取して、最大骨量を増やしておくことが、将来の骨粗鬆症を予防する上で一番効果があるとされています。したがって、骨粗鬆症の予防の面でも牛乳の摂取が勧められます。


牛乳には、女性にとって大きな関心事のダイエットと肌の健康に対する効果が認められています。

女性にとっては、ダイエットと肌の健康は大きな関心事です。

食事量を減らすだけなどの無理なダイエットを行うと、必要な栄養素を摂取できなくなり、健康を損ねる危険性があります。若い女性では、カルシウムと鉄分の不足が目立ちます。カルシウムの不足は、骨量の低下を招き、将来、骨粗鬆症の発症リスクを高めることになります。鉄分不足は貧血だけでなく、免疫力の主体となる白血球の活動を低下させます。

牛乳はカルシウム含有量が多く栄養バランスに優れている上に、体脂肪を減らす効果が認められています。ダイエットにはぜひ採り入れたい食品です。また鉄分の不足による貧血の予防にも牛乳は効果があります。たしかに牛乳は鉄分含有量が少ないのですが、鉄分の多い食品といっしょに摂ると、鉄分の吸収を促進する働きがあります。

また牛乳には、肌の健康を守る働きが認められています。牛乳中のたんぱく質とビタミンA、ビタミンB、カリウムなどには美肌効果が、カルシウムには、ストレスからくる肌荒れ予防効果が、さらに、乳糖には便秘を解消する働きが認められ、便秘に伴うお肌の荒れを防ぐ効果が期待できます。

妊婦・授乳期はすべての栄養素を十分に摂取する必要があります。特に、胎児の骨格の材料となるカルシウムと血液成分となる鉄分の不足は、生まれてくる赤ちゃんの健康状態に大きな影響を与えます。しかし、栄養素を十分に摂取するためにエネルギー量を過剰摂取すると、出産後の肥満を招く可能性があります。

牛乳は、妊婦・授乳期のカルシウム摂取の目安量(【資料】参照)を確保できる最も手軽な食品といえます。カルシウムは、妊娠中毒症の予防や妊娠中に多い便秘の解消にも効果があります。

さらに牛乳は、体脂肪を減らす働きがあるため、出産後の肥満の予防にも寄与します。

不規則な食生活、アルコールの過剰摂取、運動不足、ストレスなど、いずれも生活習慣病のリスク要因となります。特に壮年期の男性にとって健康管理の基本は、生活習慣病の予防です。なかでも中年太りといわれるように肥満の解消が重要です。肥満は糖尿病や、高血圧、痛風(高尿酸血症)、心臓病などの生活習慣病のリスクを高めることが知られています。

牛乳には、体脂肪率を低下させる働きが認められ、中年太りの予防・解消に役立つことがわかっています。さらに牛乳には、高血圧、糖尿病、痛風(高尿酸血症)、高脂血症、心臓病、がんなどの生活習慣病のリスク要因の進行を抑える働きや、予防効果が数多くの研究で実証されています。したがって牛乳は、中高年の食生活に加えたい一品です。

更年期を境に女性の健康管理は難しくなります。更年期以降に生活習慣病の発症率が上昇します。その理由は、更年期まで女性ホルモンのエストロゲンが、女性としての機能を維持するとともに、生活習慣病のリスク要因からからだを守っているためです。

更年期後、特に気をつけなくてはいけないのが骨粗鬆症です。骨粗鬆症は転倒や骨折を招き、寝たきりの原因となり、老年期の女性のQOLを著しく損なってしまいます。そのほかに高血圧、高脂血症、糖尿病、などの発症の頻度も増加します。

牛乳には、骨粗鬆症の予防に必要なカルシウムを豊富に含む食品ですから、更年期を迎えた女性には必須な食品といえます。さらに牛乳には生活習慣病の予防・進展防止にも効果が認められています。


牛乳を習慣的に摂取している高齢者は長寿だというデータが報告されています。

老年期になると摂取するエネルギー量は減ってきますが、各々の栄養成分目安量は大きく変わりません。したがって慢性的に食事の摂取量が低下すると、低栄養状態に陥る可能性があります。

老年期で低栄養状態が長く続くとうつ病などの原因となり、QOLが低下するだけではなく、老化を早めるといわれています。特に血清コレステロールの低値は、死亡のリスク要因になるといわれています。牛乳は、低エネルギーで良質たんぱく質やビタミンB群、カルシウムなどのミネラルがバランスよく含まれているうえ消化・吸収が良いことから、消化・吸収機能が低下している高齢者の食生活に推奨される食品です。

牛乳を習慣的に摂取している高齢者は長寿であるという疫学調査のデータが報告されています。さらに老年期の牛乳によるカルシウム摂取は、骨量の増加は期待できないものの、骨量の減少を防ぎ、骨粗鬆症の予防に寄与します。

また、最近の研究で、アスリートにとって牛乳の良質たんぱく質が、筋肉の消耗抑制、運動後の筋肉の回復などに効果があることが報告されています。