1.骨芽細胞の細胞機能 骨芽細胞は骨基質上に存在し、骨基質形成やその石灰化を行う細胞である(図2)。
骨芽細胞は発生学的に未分化間葉系細胞に由来し、アルカリ性ホスファターゼ(AL-Pase)陽性かつosteopontinやT型コラーゲンの産生能を示す前骨芽細胞へと分化するが、まだこの時期では骨基質上には局在せず成熟骨芽細胞と血管との間に位置する。 このように活発に骨基質合成を行う活性型骨芽細胞は、細胞全体は立方型もしくは円錐型を示し、よく発達した粗面小胞体と核の近傍にゴルジ野を有している。骨芽細胞の直下にはオステオイド(類骨層)と呼ばれる有機質が豊富な層が存在し、その中には上述のosteopontin、T型コラーゲン、osteocalcin, matrix gla protein,多糖体などが蓄積されており(*10)、その多くは石灰化に対して抑制的に作用すると考えられている(*11)(図3)。 (図3)骨基質の主な蛋白質であるオステオネクチン(A)、オステオカルシン(B)、オステオポンチン(C)の遺伝子発現と免疫局在をそれぞれ観察したもの オステオイドの深部には石灰化前線を境界に石灰化した骨基質が存在する。骨の有機基質の主体はT型コラーゲンであり pro α1(T)の mRNA の発現が骨芽細胞に確認されているとともに、osteocalcinやmatrix gla protein, osteopontin, osteonectin, bone sialoprotein, decorinなどの各種非コラーゲン性蛋白質や多糖質、ならびにinsulin-like growth factorT,U(IGF-T,U), transforming growth factorβ(TGF-β), β2-microglobulin, bone morphogenetic protein (BMP)など各種の成長因子やサイトカインが骨組織中に蓄えられている可能性が明らかにされつつある(*12〜15)。 骨芽細胞には扁平化し細胞内小器官の乏しい休止期骨芽細胞、いわゆる bone lining cell と呼ばれる状態が存在する。これら細胞直下のオステオイドはあまり発達せず、細胞体が扁平になり粗面小胞体やゴルジ体の発達が悪いことから、 bone lining cell では骨基質合成能が低いことがうかがえる。 bone lining cell と直接接する石灰化した骨表面には電子密な薄層である境界板(lamina limitans : LL )が形成されている。LLにはα2-HS糖蛋白質、osteopontinやコラーゲンの分解産物など種々の物質が濃縮されている(*16)。これら bone lining cell は骨折時においては骨基質合成を活発に行う活性型骨芽細胞へと変化する。したがって、これらの bone lining cell は単に休止期の細胞ではなく、周囲の細胞や基質から各種情報を受け取り骨細胞や破骨細胞に伝達するとともに、骨からのカルシウムなどのミネラルの輸送を調節していると考えられる。 3.骨芽細胞、骨細胞の機能を調節する因子:カルシウム調節因子 |