おわりに

【 破骨細胞の機能をまとめた図 】

本章では、骨組織とカルシウム調節機構をテーマに骨の細胞構造と機能、およびそれらの機能を調節する因子について概説した。

 骨組織は生体内のカルシウム調節を行う重要な場であり、ダイナミックに代謝を受ける器官である。骨組織におけるカルシウム調節因子の機能は、すなわち骨芽細胞や骨細胞または破骨細胞の分化や細胞活性を調節することである。

 成人の正常状態においては PTH, 1,25(OH)2D3,estrogen などのカルシウム調節ホルモンの制御下で骨形成が動的平衡を保ちながら、骨組織を古いものから新しいものへと改変している。

 また、これらカルシウム調節因子により血清カルシウム濃度の恒常性が保たれているが、その機構は本文中にあげたように副甲状腺や腎臓、あるいは骨などの calcium sensing receptor に感受され厳密に維持されると考えられる。
通常はこの機構が正常に行われているが、女性の閉経後においてエストロゲンの欠乏による骨粗鬆症などが認められるほか、成長期におけるカルシウム摂取量から壮年期での骨密度低下などといった問題から、骨代謝およびカルシウム調節機構に対する関心が高まってきた。

 研究面においても、そのような現状を踏まえたうえで進められており、骨組織中には本文で述べた以外にも神経、血管、骨髄組織の介入を無視できないことを十分に認識したうえで、 in vitro,in vivo の両面から、より活発に骨代謝研究が躍進していくことが望まれる。


はじめに

1.骨芽細胞の細胞機能

2.骨細胞の構造

3.骨芽細胞、骨細胞の機能を調節する因子:カルシウム調節因子

4.骨芽細胞と骨細胞によるカルシウムの流入、流出の調節機構について

5.骨芽細胞の微細構造と骨吸収機構

6.破骨細胞の分化および活性の制御について

おわりに

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